Home視点【070117】《アピール》ツィピ・リブニ・イスラエル筆頭副首相兼外務大臣の来日を問う

【070117】《アピール》ツィピ・リブニ・イスラエル筆頭副首相兼外務大臣の来日を問う

2006年1月17日
ミーダーン〈パレスチナ・対話のための広場〉運営委員会

 1月17日および18日の2日間、イスラエルの筆頭副首相兼外務大臣である、ツィピ・リブニ氏が来日します。外務省のプレスリリースによれば、この日本政府・外務省の側からの招待によるスケジュールのなかで、麻生太郎外務大臣との会談、そして安倍晋三内閣総理大臣への表敬・意見交換をおこなうとのことです。また、別の報道によれば国際協力機構(JICA)の緒方貞子理事長との会談も予定されているとのことです。
 この日本政府主導による氏の来日のキーワードとなるのが「『平和と繁栄の回廊』構想」というものです。

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 この構想は、昨年(2006年)7月に、当時の小泉純一郎首相が中東を訪問した際に提案したものです。昨年の7月といえばイスラエルによるレバノンへの侵攻、パレスチナ占領地への大規模な軍事作戦が私たちの記憶に強く残っているだけでなく、クラスター不発弾の地雷化など、戦争被害はいまだに続いています。その戦争の指令をまさに傍らで飛ばし続けていたオルメルトに対して、懸念のひとことさえも発さなかった小泉首相が持ち寄った「手土産」がこの構想であったことは、私たちのもうひとつの記憶としてとどめておきたいと思います。
 戦争と占領の傍らで示される「平和と繁栄」。それはこの構想の内実に相応したものと考えてよいでしょう。
 この6月で丸40年に及ぼうという、パレスチナ・ヨルダン川西岸地区とガザ回廊の占領。日本政府の提案する構想は、この占領について、不当性はおろかその事実に触れることさえ回避したまま、パレスチナ人の「信頼と持続的な和平の実現」を生み出そうとするものです。すなわちヨルダン国境における主に軍事的なヘゲモニーの維持というイスラエルの国家安全保障上の要請を損なわない形で、新たに造成する農産業団地をパレスチナ人たちに与えることで、彼らに経済的な利益(=平和の配当)をもたらすと謳うのです。しかしイスラエルの軍事的なヘゲモニーの下での入植地の拡大こそがまず、パレスチナの人々のイスラエルに対する信頼を奪い、彼らの財産や諸権利・生存権を奪い続けてきたというのが、私たちが見続けてきた現実ではなかったでしょうか。日本政府の構想は、立脚点そのものが転倒しているのです。
 そのような象徴的な意味にとどまらず、「分離壁」に象徴されるイスラエルによるパレスチナの監獄化のもとで、パレスチナ経済は現実に自給自足の手段を奪われています。自由な商品取引の回路が閉ざされ、地域内で生み出されるわずかな現金収入は、高価なイスラエル製品の購入に当てられる一方で、イスラエルにはさらなる「占領の配当」がもたらされることになります。

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 今回来日するリブニ氏は、「内閣の中でパレスチナとの交渉に最も積極的/……/パレスチナ側とまず暫定国境を協議し、国家の樹立を進めていく和平案を外相が独自に構想している…」(Asahi.com/2007年1月11日)とされています。しかしながら分離壁という「既成事実」をテコとした暫定国境の押し付けこそが、パレスチナ人の自立に欠かせない重要な地域を大きく奪い取るものであることは、繰り返し指摘されてきました。つまり、(パレスチナ)国家の樹立を進めていくとしながらも、それが国家として存立しうるのかは定かではなく、その見通しを問うことを放棄した上での「和平」というわけです。
 また一方で、「最新の世論調査ではオルメルト首相をはるかにしのぐ支持率を得るなど、次期首相の有力候補」(同前)とされる氏の経歴を見れば、モサド勤務(1980〜1984年)、移民相(2003年)、住宅建設相(2004年)という具合に、パレスチナの人びとの辛苦について、少なからぬ責任を負う立場を歩んできているということも、指摘しておかねばならないでしょう。

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 そうした人物の将来を展望しつつ持たれようとするイスラエル・日本の外相会談は、パレスチナの人びとの平和と繁栄にとっての「迂回路」にしかならないのではないかと懸念し、注視していきたいと私たちは考えます。
 イスラエルによる軍事占領の継続と入植の拡大の問題性こそが、まずは問われなければならないのではないでしょうか?


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