Home視点【100107】《要請書》対エジプト大使館、遮断壁の建設中止を求める

【100107】《要請書》対エジプト大使館、遮断壁の建設中止を求める

すでに多くの方が御関心をお持ちかと思いますが、昨年12月、エジプトがガザとの境界上に鋼鉄の遮断壁を建設したという衝撃的なニュースが伝わりました。

壁は厚さ50センチメートル、長さ18メートルで、地下20〜30メートルの地下に埋め込まれています。封鎖された状態にあるガザの人びとが生き延びるため、食糧など必要な物資を手に入れるためにエジプト側に向けて掘った地下トンネルを遮断することが目的です。アメリカとイスラエルの圧力によるものであることは間違いなく、アメリカが資金と技術を提供していることもすでに確認されています。
エジプト政府は当初否定していましたが、報道が大きくなるとついにそれを認め、外務大臣アフマド・アブー・ガイトは12月26日、テレビ番組で壁建設工事の中止の可能性を否定しました。

この壁の建設はガザの最終的破壊を招くものであり、ガザ住民はデモなどを行なって強く抗議を表明しています。ハマース政権も強い抗議声明を出すなどする一方で、何とかアラブ諸国を味方につけるべく外交努力も行なっているようです。折しも昨年末は、ガザ攻撃から一年を機に、ガザ入りを目指す国際的な連帯行動がいくつも組まれていましたが、その一つである「ビバ・パレスチナ」に参加する人びとがシナイ半島のアル=アリーシュに到着した1月5日夜、エジプト治安部隊が参加者を暴力的に囲い込み、数10人の負傷者が出るという事態となりました。数時間後には事態を知ったパレスチナ人がラファハの境界付近に数百人集まり、エジプト側に投石をして抗議しました。

壁の建設は続いており、このままでは数カ月で完成してしまいます。数日前には、エジプトが23か所に防弾ガラス付きの監視塔を立てたというニュースも伝わって来ました。150万人の人びとが囲い込まれたまま虐殺されかねない深刻な事態であることを、一人でも多くの人に知ってもらいたいと思います。

ミーダーンでは1月5日付で、それまでの経緯をまとめ、抗議の意を表明する声明文を作成し、いくつかのメーリングリストに投稿をしたほか、1月7日付でエジプト大使館に壁建設工事の中止を求める要請文を送付しました。以下、要請文を転載します。

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駐日エジプト大使
ワリード・マフムード・アブドゥンナーセル様

私たち日本の市民は、このたびのエジプトによるガザ境界上での遮断壁建設のニュースにたいへん驚き、衝撃を受けています。この壁が完成すれば、二年半の完全封鎖のあいだ、地下トンネルによる物資の搬入によってかろうじて生き延びてきたガザ住民の生活が、決定的に危機的な状況に陥ることは明らかです。

壁の建設について当初否定していた貴国政府はついにそれを認め、それが国民に対する安全保障上の義務行使であり、トンネルを通じた麻薬や武器の密輸を防ぐ目的をもっていると述べています。しかしそのために貴国政府は、150万人のガザ住民を絶滅の危機にさらすことが正当であるというのでしょうか?
しかも、貴国が口実にしている地下トンネルは、ハマース政権の誕生後、貴国がガザとの境界を封鎖するという不法行為を続けてきた結果として、生存のためにはほかに選択の余地がないなかで生まれた手段でした。地上での正常な往来が可能であれば、誰が危険極まりない地下トンネルなど用いるでしょうか?

確かに国際法は、国境の内側にある領土に対していかなる改変を行なっても、それは主権国家の権利であるとしています。しかしそれは、隣接する国家や地域に対する不法行為の行使が伴ってはならないという条件においてです。イスラエルに占領され、南と東をイスラエルに囲まれ、北側は地中海に面しているという地理的条件にあるガザにとって、唯一の出口である貴国との境界に鋼鉄の遮断壁を埋め込まれることが不法行為でなくて何でしょうか。仮にトンネルの問題を抜きにしても、長年の占領に苦しめられ、一年前のイスラエルによる侵攻によって荒廃した生活を送るガザ住民を、政治的にも精神的にも完全に追い込んでしまう犯罪行為です。すでにガザ住民が壁建設に抗議し、即時中止を求めるデモを連日行っていることは、ご存じのとおりです。

貴国はこれまでにもガザを封鎖し、ガザ住民の生活を困難の極みに陥らせることにおいて、イスラエルと共犯関係にありました。それでもこれまで国際社会の非難がさほど貴国に向かわなかったのは、占領を行なっているのはイスラエルであり、イスラエルの占領こそが貴国の誤った政策を導いていると考えたからです。しかし、貴国が壁建設を継続し、イスラエルとともに新たなガザ住民虐殺に手を貸すのなら、貴国はイスラエルと同じ罪を犯すことになります。

私たちは強く訴えます。エジプト政府は、ガザとの境界上での遮断壁の工事をただちに中止して下さい。そしてガザにおけるハマース政権誕生以来続けているガザの封鎖を一日でも早く解き、ガザ住民がエジプト国内と自由に往来ができるようにして下さい。イスラエルによるパレスチナ占領に加担しないでください。

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